釣船 湘南 茅ヶ崎 一俊丸

血尿出るまで走ってみやがれ。

 先週の土曜日、東京での31キロ走はそれはそれは悲惨なものだった。

 前半の調子はよかったのに、後半27キロ過ぎにペースダウン。
脚の疲労感がパンパンになって、もうこれっぽちも動かない。

 もうバテバテのズルズル…。

ラストの4キロが遠い…。

 最悪の展開が悔しくて悔しくて、湘南国際のフル出走まで1カ月なのに、不安で不安で、体は疲れているのに、まともに眠れない。

 2晩、もんもんと過ごした朝。

決めた。

リベンジは、本日(月曜)だと。

 休み1日で長距離2本は未知の体験だけど、もう自分には、

脚が痛いとか、

30キロ過ぎの壁とか、

オーバーワークとか、

コンディションとか、

そんなものは全部体のいい言い訳に聞こえる。

…血尿出るまで素振りしてみろ。

そしたら少しは楽になるから…

 これは昔読んだ確か卓球マンガの中のセリフ。

 ナオミ、お前もグダグダ言ってないで、血尿出るまで走ってみやがれ。

 土曜に走ってから吐き気が止まらず、月曜まで食事はほとんど取ってない。

それでもジェリータイプのドリンク剤2つとミネラルウォーターを手にして出発した。

 スタート地点は茅ヶ崎港脇のグランドホテル。

ここからサイクリングロードを使って東へ。

片瀬漁港までの8キロを往復。

基点のグランドホテルまで戻ってきたら、そこからまた東へ。

今度は浜須賀の交差点までの2往復、これで30キロになるはずだ。

 台風のうねりを待って数多いサーファーが浮かぶ海。

10キロを越えた時点から雨が降ってきた。

それは体が熱くなりやすい私には、恵みの雨だった。

 スタート時にスローペースを心がけたのがよかったのか、思ったより脚は辛くない。

今回はこの半年、ランナーズの里奈さんのメニューどおりに走ってきた成果を、脚の強さを感じる。

距離感を熟知しているホームグランドだったことも精神的な安心に繋がった。

 辛くなってきた時には、ナハ空港で飲んだ苦いオリオンビールの味を思い出した。

大シケの遠征で船酔いに倒れた時、

「根性なし! 起きろ〜っ!」と、梅ちゃんから殴られたアルミバッドの痛さを思い出して耐えた。 

 16キロ過ぎたころ、

東京で味わった屈辱感が1枚1枚、薄いオブラートが剥がれるかのように、吹き飛んで行くのを感じた。

20キロ過ぎには、頭を覆っていた不快なモヤモヤ感はなくなり、クリアな自分、心地よいたった1人の自分になっていた。

 後半スピードは落ちたものの、快適なまま無事ゴール。

 できた。

自分にだって走りきれるんだ。

なによりも時々頭をよぎった『リタイア』の誘惑に負けなかった。

あまりの達成感に発狂しそうだ。

 家に帰ってシビアにコースを計測してみたら、29キロしかなかったけど、まー今回は許してやるよ、ナオミ。

取りあえず走りきったんだから。

 今夜こそは寝られるぞーと、期待してたんだけど、今度は嬉しくて興奮してて眠れない。

膝の疲労感が心地よくて、眠れない。