普段はほとんど自分が誰なんだかケロッと忘れているので、たま〜に、
「もしかしてナオミさんですか?」といきなり声をかけられると仰天する。
こんな時、『滅多に写真も出さないのに、どーして分かったんだ?』と正直な疑問の後で、大抵しまった、と思う。
必ずって言っていいほど、そうやって声がかかる時は、酷いかっこの時だからだ。
道に迷ったあげくに慌てて船に乗り込んだ時、仕掛けが足りなくて全速力で駆け込んだつり道具屋さん…
そんな時に限って、
「ナオミさんですよね?」とくる。
まるで狙ったように、だ。
髪はぼさぼさ、化粧はまだら…そんな姿の私をさらけ出す、恥ずかしいこと極まりない。
先日もやってしまった…。
しかも自宅内、徹夜明けとくれば、いかに私が小汚いかっこをしていたか想像つくだろう。
自宅まで原稿を取りにきてくれた宅配のその男性、私の書いた宛名をわざわざ読み上げた。
「あ つり情報に送るのですか?
うわ〜、僕ファンなんですよ〜。
毎号読んでるんです…」
その嬉しげなお兄さんに、いやな予感が背筋を走る。
そんなことはどうでもいいから、早く原稿持って出て行って〜と必死に心のうちで懇願する私。
しかしその兄ぃの無駄話は止まらない。
「釣りやってらっしゃるんですか?」といろんな余計なことを話しかけられたその先に…、
「あ あれ? お客さまの名前…『C.S.C.…ナオミ…さん?』
あ あの…ナオミさん…?」
そこまで言うと兄ぃは、私の悲惨な全身を見回し、絶句…。
すでに大赤面している私と、長時間見つめ合った後…、
全く逆ではあるが、恋が芽生えたと間違うほどの長い時間、互いの視線を絡ませた後…、
彼は無言のまま出て行った…。
こうして大事なファンをまた1人なくす私であった…。