釣船 湘南 茅ヶ崎 一俊丸

恐怖のトビバコ。

子供の頃から、1人で本を読んだり、絵を描くのが好きな、暗い子供だった私。

苦手科目はズバリ、体育。
球技もだめなら、徒競走はクラスでビリ2。

中でも私が一番嫌いだったのは、トビバコ。

活発なクラスメイトたちが、難なく飛び越えて行く中、私はいつも居残り組…。
その屈辱感ったら、なかった。

いや、それだけではない。
奴、トビバコ自身に、私は恐怖すら感じていた。

「もっと助走にスピードつけて!」
先生はいつも私にこう叫んだ。

でも…

走って…

だんだんトビバコに近くなると…

奴に…

奴に…
顔があるようで…

その土偶のような無表情が…

こわいっ!

…失速…。

テストの時は、その恐怖に打ち勝とうと…

必死ににらみ返したけど…

もうすぐジャンプ台というトコロまで近くなって…

私の目に飛び込んできたのは…

垂れ下がる…

キャンバス地のケバケバ…。

こうなると私の目にうつるのは…

土偶なんて可愛いものじゃなくて…、

落ち武者の首…。

脚は止まり、力なくトビバコにお尻を落とす…。

トビバコ、トビバコ…今だかつて1段だって飛べたことが、ない。