★ 『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに単行本になったものから抜粋、大幅改訂したものです ★
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12. 遠征の天国と地獄〜手石港 永吉丸
どこまでイッても青く澄んだ海、海、海〜っ!
今までグラビアでしか見たことがないMy Fantasy, 大ダイ、シマアジ、オナガダイがうようよこの中に生活してると思うだけで、う〜っ、イッちゃいそ〜!
気分はすっかり、So High !
今回は初の大物狙い、初の遠征。
南伊豆、手石の永吉丸、ターゲットはメダイ〜ッ!
船に乗るとまず船長にタックルを見てもらう。
LLサイズの100号ビシに、ハリスは長く6メートル。
さらに、
「伊豆に来たらデカイ魚が掛かってもいいように、テンビンの上と下両方にクッションゴムを付けること」と、船長。
今まで単なる夢だった大物がソレ用のタックルを準備するといきなり現実目を帯びてくる。
期待はビンビン、ワクワクめ〜いっぱい。
もう絶対釣ってやる〜!
ポイントに着くと今度は船長がコマセのまき方を教授。
「釣れたらいいな、なんて思ってたら釣れないぞ。
攻めて、攻めて、積極的にコマセをまけ」
船長に教わったとおりに竿先をドップリ海面まで入れ、勢いよく180度持ち上げて、どぉ〜っとコマセをまく。
釣りっていうより、フィッシング、スポーツ感覚だ!
開始1時間、オモテでオナガダイが上がった頃は、まだまだ元気まんまん。
しかしその後は船中全員やっても、サバ、サバ、サバ。
うんざりのサバオンリー。
「次はもしかしたら…」の期待で頑張っていられたのは4時間まで。
出船前は気持ちよかった日差しも今では太陽ギンギン、体は汗まみれ。
ファンデーションは崩れるどころか溶けて流れだす。
あ、あ、あ、暑〜いっ!
朝から次々にウエアを脱いで、今ではタンクトップにサロペットパンツだけ…これ以上は脱げない…。
考えることはただ1つ。
もういっそ竿を投げ出して、海に飛び込みたい!
それでも今年2月に経験した極寒の中の出船よりはマシ。
暑さよりもナニよりも、息がゼィゼィあがるのは、100メートル前後のタナからカリカリ巻き上げる手巻きリールのせい。
周りで勢いよく電動リールがウィ〜ンと唸れば、私はさらに、う〜ん。
最初の元気はどこへやら。
コマセをまく竿に振られているのはダレた私の体のほう。
手巻きでアコウを釣った時だって、仕事に追われ前日、前々日と2日間完徹状態だった。
体力と世渡りには自信があった私でも、今回は正直、辛いっ。
いつも腕のなさをタフな体と精神力でカバーしてきた私も、沖揚がり40分前気力はブッチ切れ…。
一投だけ、一投だけ…と、とうとう竿を置いた。
ちょうど前にいた船でオヤジが1人でヤリトリを始めた。
あんなに頑張っちゃっても、どうせサバなんだぜ〜っ、とすっかり斜め目の私。
しかしボッコリ上がってきたのは、正々堂々、正真正銘のメダイ!
「潮が変わって食ってきたよ!
早く投入して!」と船長が言うか言い終わらないうちに、こっちの船でもドンドン竿が曲がりだす。
まずは常連のスーさん、その次は右舷のオモテ、続いて左舷のオモテ…上がってくるのは、5キロ、6キロのメダイ、メダイ。
大慌てで投入した私の竿だけいつものアタリの、サバ…。
タナに着く前にサバが食っちゃった。
「今度投入したら終わりだよ!」と船長(この辺の決まりで13時きっかりに納竿するそう)。
急いでコマセを詰め替え、焦りまくりの大パニックの中、最後の1投を投げ入れる。
コマセをまいてもアタリはなし。
船長が飛んで来て、
「エサのイカだけでも漂わして!」
「は、はいっ!」
竿を振る私に確かにきたアタリはビビビ〜ッ…サバ…。
目の前真っ暗、放心状態。
たった1投のお休み、その1投が勝敗の別れ道、天国と地獄。
く、く、く、悔しい〜っ!
暑さに負けて、手巻きに負けて、そして自分に負けた…。
く〜、情けな〜いっ!
数あるスソ記録でもこんなに酷いのは初めて。
しかしいくら後悔してもビッグ ミステイクは取り返しがつかない。
そこに船長がやってきて、肩を落とし涙ぐむ私に、なんと夢の一言。
「明日、俺も竿を出してしっかり教えてやるから、もう1日乗っていきな」
「ええ〜!? ほ、本当〜?」
次の日の狙いはイサキ五目。
私は船長と常連の梅ちゃんの間で竿を出す。
その日は左舷が大アタリ。
私たちが並んだ右舷は不利にも関わらず、船長と梅ちゃんは2尾、3尾とまとめてガンガン釣っていく。
私との差はすぐに3倍、4倍。
コマセ釣りってこんなに腕の差が出る釣りだったんだ〜。
私が表情を曇らせると必ず梅ちゃんから、
「楽しくやんなきゃ釣れないぞ〜」の目からウロコのお言葉。
結局私の釣果はイサキを15尾。
明るい海に船長と梅ちゃんのジョークが飛び交う、昨日とはうってかわってソウ ハッピーなパラダイス。
南伊豆の一日となったのだ。
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んーーーー。懐かしい…でも、今から15年ほど前のこの釣りのことは昨日のことのように覚えてます。
特にメダイ釣りの最後の投入で、もう食わないって分かっているのに、私の竿を受け取り、最後まで振ってくれた船長の背中。
3年前に永吉船長が30代の若さで他界したこともあって、とても忘れられません。
(記事中でタックルの説明がやたらゴッツイのが時代を感じますが、当時の思い出でもあるので、そのままで掲載しました)。
「釣れたらいいな、なんて思ってたら釣れないぞ。
攻めて、攻めて、積極的にコマセをまけ」
船長のこの言葉は今でも、釣りの時でなくても、常に胸にあります。