『ツリまくりのイキまくり』19

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☆『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに1999年に単行本になったものから抜粋、大幅改訂し
たものです ☆

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タチウオの釣り方はこちらから
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18. タチウオ船の特等席 〜 久里浜港 大正丸

久里浜の大正丸の親父船長に私はメチャクチャにひいきされている。

私の釣り座はいつも特等席。
釣り始めても、主要なタナがすぐに分かるようにと、船長はわざわざ私の道糸を輪ゴムでマークしてくれる。

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やっぱり私のビボーのせい…。
そう思うのは私だけ。
親子ほど年の離れた親父船長、残念ながら私のパンツに関連した陰謀はないらしい。

NBFを始める前から特別扱いだったのだから、メディアを持っているライターのいやらしい特権ということでもない。

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「あのぉ、タチウオ釣りたいんですけど…」
私が大正丸を初めて訪れたのは、釣行わずか2回目。
名人級の猛者が集まるこの船で女1人でやってきた私は、目立つ、目立つ。

周りのオヤジがいろいろ世話を焼いてくれても、
「サルカンをここに付けて…」と言われれば、
「は? さ、猿…缶…?」と、もう釣りの前から問題ありあり。

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そんな私に船長が開けてくれた席は操縦席のすぐ脇。
そう、私にとっての特等席はオモテでもトモでもなく、船長に一番近い釣り座。

え?
それはひいきされているのではなく、心配されてるだけだって?
ま、まあ…若い女性にばかりに価値を与えたがる日本男性たちに、私があからさまにチヤホヤされるのは船上ぐらいなんだから、このさい好きに言わせてちょ。

とにかくその時は船長の指導の下、見よう見まねでやっとタチウオ2本をゲット。
しかし私にとっては貴重な2本、貴重な体験。
初めて私が釣り上げた時、いつもムッとしている船長の横顔がほんの少し緩んだのを、今でも覚えている。

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今回は1年ぶりの大正丸でのタチウオ釣り。
この1年で腕も磨いた、ワラサも釣った。
先シーズン、タチウオと同じように泣かされたショウサイフグも絶好調。
成長した私をぜひぜひ船長に見てもらいましょ。

「今年もよろしくお願いします」
珍しく私がちゃんと挨拶しても、船長は相変わらず無言。
そして今日はいつになっても船長の顔が晴れない。

それもそのはず、すでに出船から3時間がたっても大半がボウズ、トップでもまだ3本という貧果…。

食いは渋く、アタリは小さく、食い込みも浅い…。
シャクリ方を変えてもエサはいいように弄ばれるだけ。
私の釣果も当然、0本…。

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  ↑ 傷モノにされた状態。

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  ↑ おいしいトコだけもっていかれた、一発ヤリ逃げられ状態

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メチャクチャに遊ばれ、グチャグチャに搾り取られて捨てられた身も心もボロボロ状態。

ああ、もう!
日頃お世話になっているあの人に5本、営業用に5本、そしてピックアップ用に5本…と、勝手に釣果の予定を立ててきたのに〜。

携帯電話は次々に鳴り、
「オレの分釣れた?」の疑問の荒らし。
激ウマのタチウオ、もらうほうも期待ムンムンだ。

しか〜し、今回は私にも勝算がある。
「まかせろ」のいつもの強がりにも、今日は全く根拠がないわけじゃない。

ジャーン!
取り出したのは徹夜で作った特製仕掛け、C.S.C.NAOMIE食い渋りスペシャル〜!
ハリは小さめ、ハリスは細め、タコベイトに蛍光パイプと、キラキラ光ものめいいっぱい!

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「潮が明るいので深場に行く」と船長。
ここで状況は変わってきた。
後ろから聞こえてくる、数本の魚が取り込まれた音、ビッターン、バタバタ…。

ムムッ。
食いがたってきたのか?
さらにまた、ビッターン、バタバタ…。
ムムムッ。
私は唸るだけで依然ボウズのまま…。

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船長が見かねてやってきて、
「このランプ付けてみな。
…あ? 
あー!
なんだこの仕掛け、これじゃ絶対に食わないぞ。
あ〜ぁ、俺が最初から見ていれば、よかった…」

「イ〜ッ!?」

「船宿仕掛けにすぐ替えろ。
このパイプの色が食うんだよ!」

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30分後…ジ〜ンと実感…。
船宿仕掛けは食いがいいっ。

しかしそれでも今日のタチウオは難しい。
アタリが…コツッ。
「た〜!」
慌てて即合わせ…掛からない…。

「ねーちゃん、違うよ。
竿先止めて送り込んで」
とうとう船長だけでなく、周りのオヤジからも応援が。

それでも3回、4回、5回…、成長した私はどこへ?
アタってもアタっても、みんな空振り。
アタリがあったらシャクってる手を止め、同時に竿先の方向を変えて送り込む。
そんな芸当、私にとっては超ウルトラC級の難しさ。
アタリを無駄にするために私は赤面、周りはため息。

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午後をまわった頃、やっとガツン!
竿が動かなくなるほどの衝撃がやってきた。
ギュギューンの引きの後には、銀色に輝く長い魚体が現れる。
1年ぶりのタチウオだ!

3時まで粘って夕マヅメを狙い、6本の釣果。
それは思いっきりの…スソ…。
は、恥ずかしい〜。

コソコソと帰ろうとする私を呼び止めて、
「悪い時に来ちまったな。
来週また来いよ。
今度は大釣りさせてやる」
まるで船長、自分が悪かったような顔をして言うから、私はもう一回頭を下げる。

「こ、今年もお世話になります」

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「『ツリまくりのイキまくり』19」への5件のフィードバック

  1. 私も大正丸が好きです
    昨年もオヤジ船長にクロダイ・ワラサ釣らせてもらいました[E:dog]

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