☆『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに1999年に単行本になったものから抜粋、大幅改訂したものです ☆
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『本当に辛い手巻きでアコウ』
第3回目の『手巻きでアコウ』に師匠が決行を発表したのは、すでにシーズンが終わった後。
ただでさえ嫌なのに、釣れる可能性が少なければ、なおさら行きたくない。
しかし太海の幸昌丸の船長に、
「釣れなくて嫌なのは、船長も一緒だ」とボヤカれようが、師匠の意思は固い。
「釣ることより、巻くことに意義がある」と一歩も譲らない。
とうとう、わざわざ船を仕立てて出ることになった。
普通の深場釣りは1回の投入で多点掛けを争う、一発大穴狙いのギャンブル的釣りなのに、私たちの手巻きはやたらとストイック。
20本もハリを付けるオヤジがいる中で私たちの基本の仕掛けはハリ6本。
だってもし全部に魚が付いちゃったら、重くて巻き上がらないもの!
ところが当日はそんな心配さえ無用。
状況は、悲惨…。
食いがいいとか悪いとかさえも問題にならなかった。
とにかく底潮が速くてオモリが真っすぐ沈まない。
700メートル(この時使用していたのは、大きめのアジ用リール。8号の糸をこれしか巻けなかった)の道糸が全部出ても、底に付かない…。
ヒ〜ン!
タナに届きもしないなら、わずかに釣れる可能性はこれで完全に消滅…。
それでも師匠の手前、止められない。
船上はすっかり汗と涙のスポ根、ド根性の世界。
それを見ていた船長は、
「一体なんの因果で…?」と首をかしげる。
魚が付いていないのに700メートルの道糸をわっせわせと巻くのがどんなに苦痛か?
オモリが着底しないのが分かっているのに、合図が出ればまた投入しなければならない、その心痛を理解してもらえるか?
あまりに辛い釣りに、シュルルゥゥゥ〜と消滅音を出して、私は…壊れた…。「ふ… ふ… ふぁっはっは!
もうアコウはカッタクリで狙っちゃおうかな?」
岩ボーは6号ハリスに2ヒロも枝スをとったナイスな仕掛けで自信満々で挑んだ。
結果は投入のたびに、仕掛けがチリチリにカールして帰ってくるだけ。
この釣りでオデコは慣れている岩ボーも、よっぽど落胆したのか、シュルルゥゥゥ〜…壊れた…。
「「ふ… ふ… ふぁっはっは!
俺はコマセシャクリで誘っちゃうぜ〜!」
キレたジョークがこだまする、危ない雰囲気の船上。
「350号オモリがなんだ!
私の誘いは小突きだぜ!」
「甘いな!
俺はカットウ仕掛けで必殺空合わせ釣法だ!」
ハチャメチャで修復不可能になった私たちの間で、師匠だけは冷静。
アコウがだめなら、と、タナを変えメダイやキンメを狙う。
そんな知恵も働かない弟子どもはサル同然。
沖揚がりまで進化の過程をさらに逆走するのであった…。