『ツリまくりのイキまくり』28

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★ 『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに単行本になったものから抜粋、大幅改訂したものです

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『悟りの境地』〜横浜新山下 打木屋

「フリーって好きな時に釣りに行けていいねぇ〜」

よくこんなことを言われるけれど、それは大間違い。

スケジュールを自分本位に調整できるのは、いわゆる先生クラスのクリエータほんの一握りだけ。

私のようなペーには、クライアントや編集者たち、膨大な資料を片手に、
「コレ、あさって締め切りね」なんて、いとも簡単に言ってのける。

「絶対やんねぇよ!
明日は楽しみにしていた釣行予定日なんだよ!」と心では叫んでも、私の口から出る答えは、
「わ、分かりました…」

く〜、平然と煙草なんかふかしているクライアントの口の中に、アミコマセを突っ込んでやりたい!

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そんな混乱、格闘の毎日の中、や〜っと空いたスケジュール。
今度こそ、釣りだ!
仕掛けを揃えてウエアを積み込んで、よしっ、準備万端!

しかしPM6時、いつもの天気予報…。
気象衛星が沖縄のちょっと先に見える白い物体を伝える…。

ま、まさか、早々と訪れた、台風〜っ!?
日頃は大ハズレの予報も今回はピシャリッ。
暴風雨の大シケ。

くそ〜っ。
台風の奴!
マグナムにイワシのミンチ詰め込んで、8連発で打ち込んでやりたい!

6

そして今回。
徹夜と居留守でめちゃくちゃ無理して空けた、な、なんと5ディズ!

日頃のうっぷんを竿に託す予定は、超豪華。
まず、スズキ。次の日、スズキ。そしてスズキ…のスズキ責めっ!
名付けてスズキ乱交ツアー!

ところがまたしても、まさかの邪魔者。
今度は東京湾でのタンカー座礁事故での油流失…。
ガィ〜ン…。

被害を受けたスズキ船は休船…。
ちくしょー。
人災だと思うと余計に頭に来るっ!
タンカーなど、自動小銃にサンマのミンチ詰めて、ダダダッと打ち抜いてやる!

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しかし幸い、今回の事故はそんなに酷くなかったみたい。
数日後には出船可能。

それなのに、それなのに…ヒューーー。
ちっとも止まないのは、南風。

今度は…シケ。
次々と原因続出。
あんなに空いていたスケジュールも、残すところあと1日…。

ふ、ふざけんな〜、オラ〜ッ!
み、南風の奴〜。
オキアミをバズーカに詰め込んで、ズド〜ンと一発、食らわせてやる!

2

風もまだまだ強いラストディ。
次々に立上がる高い波を見ながら、横浜新山下の打木屋の揺れる船上。

4日間の足止めと、ダメもとで出掛けた分、3時間の食い渋りもなんのその。
日頃の強欲丸出しばかりが釣りじゃない。
釣りをするという行為自体に意味がある、と腕を組み、気分は仙人、悟りの境地。

1

そこにその日、もう1人の客であるオヤジにアタリが。
上がってきたのは3キロオーバーのスズキの姿。
その巨体を見て、渋いスズキオヤジに似合わない声で、
「やった〜!」

ムムム…。
人がせっかく悟っているのに隣でバホバホ釣るオヤジ。
こういうオヤジには、350号オモリで頭をガツン、と。

おっと…釣りの勝負は釣りでカタを。
私が取り出したのは、ジャーーン!
C.S.C.ナオミ、食い渋りスペシャル!
3号の細ハリスをいつもより1メートル長くしたもの。

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もぞもぞ、コツッ。
イキナリきた、アタリ!
やったナオスペ、大成功…と思っているうちに、ブチ…。
き、切られた…。
魚が掛かっても取れないナオスペ、今回も大失敗…。

せ、せ、せっかく3時間ぶりに食ったのにぃ〜!
今度こそ、と、ドラグゆるゆる、いつもの仕掛けに替えて、再投入。
悟りの時間などとっとと終わり。
船に乗ったからには、クーラー空っぽで帰るものか!

5

コツッ…。
きた!
すぐにギュ〜ン! と抵抗を見せるスズキと、ドッドッドッ…高鳴る私の心臓。

まさに生命の躍動だ。
走るスズキにドラグは止まらない!

8メートル巻けば、すぐに8メートル戻される。
5メートル巻けば、すぐに5メートル戻される。

5分、8分…。
白熱のヤリトリ。
私の手の平は汗でびっちょり。

「で、でかい…。
きっと5キロはある…」

4

掛かった時は、
「慎重にやんなよー」と叫んだ船長も、あまりの長いファイトに、タモを置いて客と世間話。

5分、10分…。
「もう魚クタクタだよ〜!」
呆れた声を出す船長。
しかし沖揚がりまであとわずか。
これがラストチャンス。
無理はイヤ!

4日間の足止めとさっきのバラシが頭を独占。
とうとう15分たっても、獲物はよほど大きいのか、まだ元気ムンムン。

そこに私の竿に手を伸ばした船長、白い目でドラグをキュッと締め上げる。

5キロオーバーの巨大なスズキはどこへ?
タモに入ったのは1キロちょいの、極小型…。

ボォ〜っと顔から火を吹く私。
「お、お待たせしました!」と、船長に頭を下げまくり。

でも3週間ぶりのスズキ。
ちっちゃくても、やっぱ、うれし〜。

3

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