釣船 湘南 茅ヶ崎 一俊丸

『ツリまくりのイキまくり』13

★ 『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに単行本になったものから抜粋、大幅改訂したものです ★


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13. あこがれの銭洲戸田港 たか丸

 ピックアップトラックの荷台に重いクーラーを押し込んで、車体をきしめかせ湾岸線を走り抜ける。
パッセンジャーシートには戦いを終えたワンピースロッド。
左窓には大漁旗をはためかせ…う〜ん、カッコ良すぎるぞ〜っ!

 しか〜し!
そんな夢が叶う時がとうとうやってきた。
幸せ過ぎて自分が怖い、今回はそんな凄過ぎの夏のスペシャル企画。

 超高級魚のバホバホ食い。
大物釣りのミラクルボックス。
沖釣りの夢の聖地へ釣行。
その名は、銭洲〜っ!
あこがれの銭洲遠征へ、西伊豆のたか丸から初挑戦!

 7時の開始まで待ちきれなくて、キャビンのベッドから這い出たのは6時。
それから40分もすると、青々とした海に堂々と登場したのは、銭洲岩礁!
うううっ…、うれしい〜っ。
とうとう来た。
今日はもう思いっきり楽しもう!
Let’s get WILD today!

 いよいよ投入の合図。
コマセ道具をシャクる途中にガツン! の大アタリ。
それが立て続けに3回も。
ハリ掛かりはしなかったものの、今日一日、食いがいいことを約束されたみたいで、ジ〜ン、取りあえず幸せ〜。

 でもいつまでも雰囲気に酔っててはダメ。
なんと言っても、今回の野望はズバリッ、クーラー満タン!

 開始から40分後、右舷胴の間のオヤジの竿が海中に突っ込んだ。
上がってきたのは『昨日から釣れだした』というカンパチ、3キロ。
頭にはちまき巻いた精悍なルックスは、なかなか悪そうでJust my type !

 私も速攻、仕掛けを付け替えムロアジをエサにと刺した。
ほどなく船中騒然、大盛上がりのカンパチパーティに突入!
アタリまくりの釣りまくり、右舷も左舷も休む間もなく、竿先ギュンギュン。
隣の梅ちゃんも手慣れた様子で難なく取り込む。

 そして私にも待望のアタリが!
ククッ。
掛かった! と竿を取ろうとする私に、大慌てで梅ちゃんが、
「まだだ!
この動きはカンパチに追いかけられてムロアジが逃げているだけ」

う〜っ!
我慢をしていると竿先はさらに大きく揺れる。
ググッググッ。
よし、今度こそ! とまた竿を取ろうとするが、今度は船長が、
「落ち着け!
もっと竿先が海の中にグッと突き刺さってから!」

 も、もっと我慢しろって!?
Please baby, Don’t tease me !
状況を楽しめる余裕が皆無。
すでにイライラマックス状態。
焦らされて楽しいのはベッドの中だけだ〜!

「もう〜ダメェ、来てぇ〜!」
思わず叫んだ時、ククッ、グーッ!
「は、入った〜っ!」

 しかし竿を取ろうと手を伸ばした途端、竿先がフッと戻り、同時に隣のアニィの竿先が、グーーーーッ!
「きたーーーーっ!」
思いっきり叫んだ、隣の彼…。
最後の最後でカンパチの奴、隣のアジに食いついた…。

 そのうち2尾目、3尾目を上げるオヤジも出てきた。
でも私のほうはムロアジをしゃぶられたり、吐き出されたりのもて遊ばれ状態。
濃厚な愛撫が続くだけで、最後の決めての食い込みは、なし。
釣れていないのは私を含め、船中2名だけに…。

 焦る気持ちをおさえ、もう一度エサをチェックして再投入。
こい、こいっ、私の竿に!

 待つこと20分。
ググッとまた竿先に動きが。
ムロアジが逃げ始めている。
ところが竿先を凝視しているうちにピクリともしなくなった。

 はぁ〜。
また逃げられちゃった…。
肩を落とした直後に、クッ、クッ…。
あ〜!
まだカンパチがいる。
近くでウロウロしているみたい!

 ギンギンの緊張感の中、やっと竿先が海面に真っすぐ、グーッ!
突き刺さった!

「やった!
待ってました!」

「竿はキーパーに掛けたままでいいから、ゆっくり巻け!」と梅ちゃんがタモを持って飛んで来る。
「ヤリトリは?」
「さっきドラグを調整したから大丈夫」

 ジリジリジリジリ…。
意味もなくこれがラストチャンス、最後のアタリのような気がしてならない。
魚が引いて道糸が滑り出すごとに、バレちゃうんじゃないかと不安で顔が引きつり、右手が凍る。
「同じテンションで巻けよ〜!」と梅ちゃんが叫ぶ。

 焦らしに焦らされての大オーガズム。
なんとか無事に上がってきたカンパチは2.7キロ〜ッ!
「よ、よ、よ、よっしゃ〜!」

 この後船はメジナのポイントへ。
私が、とはいかなかったが、3、4キロのメジナたちが上がり、船上はいつまでも大騒ぎのままゲームオーバー。

 大満足の銭洲遠征。
ブリッジの後ろの簡易ベッドの上で傾きかけた太陽と潮風を浴びながら、爽快な帰路についた。

 

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海はきれいだし、魚は豊富だし、初の銭洲は本当に楽しかった〜。
一点今でも不思議なのは、この時たか丸でお土産にもらった開きが脂のりのりですっごいうまかったこと。
その魚のルックス、どう見ても単なるアカイサキだったんだけどな〜。