『そろそろ憧れのリカさんとお会いしたいのですが、セッティングお願いできないでしょうか?』
そうM氏からメールをもらった私。
もちろん、イラストレータとして息の根を止められた私には、憎きM氏のために裂く時間なんてとてもない。
それでもその恨み節ももう過去のこと。
以前M氏に散々、
「リカちゃんっていう綺麗な友達がいましてね……」
「すごい美人なんだけど、周囲が息の根止まるほどの毒舌でして……」と、話し尽くした経緯もある。
それになんと言っても、M氏もリカちゃんも古くから知る友人なのだ。
ここは、M氏の好奇心のために、ひと肌脱ごうではないか。
さて、問題の日。
M氏から指定された都内のバーに着いた私たち。
リカちゃんは、そのへんの男には全く興味を示さないので、あえてM氏のことを具体的には告げず『私の友人も同席する』とさらっと言って連れてきた。
反対に当然M氏はこの飲み会の準備段階から、鼻息荒い。
やれ、バーの後は三ツ星レストランで食事だ、その後はタクシーで送る予定だ、などと、大金用意しリカちゃんのご機嫌をとる計画に必死。
ところがやっと意中の人、リカちゃんが私と姿を見せても、M氏は奥のカーテンの脇にずっと立ったまま、こちらを伺っているだけ。
相変わらずスカーフを巻き、赤ワイン片手のジョージ・クルー二気取り。
あ、いや、突き出たお腹は以前に増して大きくなっているか?
「ずっとお会いしたかったです」など、速攻でリカちゃんの前に飛んできて、臭いセリフの100も200も吐きそうなものだが、彼はずっと歩きださない。
なにこれ、呼びつけておいて失礼ではないか?
私がイライラしだすこと、3分。
やっとM氏がこっちへゆっくりと歩いてきた。
でっぷりとしたお腹は歩調に合わせて上下に揺れているが、一番その腹を近くで見ているはずの彼はなぜか気がつかない。
きっとリカちゃんの前で、あのワインをくるくるまわして、くちゃくちゃ反芻するに違いない。
そう私が覚悟すると、M氏はぴたりとリカちゃんの前で止まり、さらに間をおいた後、こう言った。
「あこがれのリカさんにお会いできて、とても嬉しいです」
そして演技がかったように、目を細め、
あ。
そう来たか!
なかなか挨拶に来ないで失礼な奴と思わせ、気持ちを盛り下げておいて、
「美しさのあまり動けなくなった」とのセリフで、一気に盛り上げるつもりかーーー。
考えてみたら、いつものM氏のうざい戦略ではないか?
しかしリカちゃんは、超のつくほどのお嬢様育ち。
美しいや綺麗やら、美人やら、成長過程で、あいさつと同様なほど、褒め言葉をふりまかれてきた。
しかも頭は異常にキレる。
こんなアホみたいな演出が、通用する訳ない。
M氏を前にリカちゃんは、にっこり笑い、こう言い放った。
「あら、私は……
きたーーー–ッ!
イラッとくるM氏のセリフを、スカッと撃退させるリカちゃんのカウンターパンチ!
風船扱いされたM氏の自意識は、今やぺちゃんこに潰され、遠くの空まで飛んで行った……。
そして二度と帰ってくることもないだろう。
しかしM氏が絶句していたのもつかの間。
ふいに遠くに目をやり、こう呟いた。
うひゃーーー。
製作者も想定外のこのこじれっぷり。
あまりの混乱ぶりに、思わず作った『セリフメーカー』。
人をイライラさせたい時や、スカッとしたい時に使おう。
ツイッター、フェイスブック、ダウンロードしてラインにも使えるよ。
※この話はフィクションであり、作者の知人の中からM氏、リカちゃんを探さないでくださると助かります。








