人は私を自己チューな女だと呼ぶけれど、とんでもない。
私は常に人への気配りや礼儀を怠らない。
特に相手が長年憧れていた若き天才作家A氏なら、当然のこと。
ふって湧いたその作家A氏とお会いできるチャンス。
それはもともと、やはりその作家Aの大ファンだったプロヂューサXの配慮のお陰だった。
ドキドキと決行の食事会を待つ私は、彼の書いたエッセイ全てに目をとおし、対面の時に失礼がないよう、予習を怠らなかった。
ところがプロヂューサXは違った。
「作家A氏はそろそろ結婚しそうですねー」
「作家A 氏の兄はろくでもない奴のようです」
すでに彼のオタクと化している私はこう話をふってもXの返答は決まって、
「え、そうなの?」
「へーそうなんだー」
ちょ、ちょっと待て。
あんた、作家A氏に長年ご執心で彼のこと「天才」って呼んでいたじゃん。
それなのに、どうして彼のことナニも知らないの?
私よりかなり年上のXに意見するのもどうかと思ったが、ここは作家との会食のために、あえて意見した。
「当日の会話をスムースにするために、もっと彼について予習が必要かと思いますが…」
「あーそうだねー」と、軽く受け答えるX。
だ、大丈夫かよー。このおっさん…。
すっかり斜目の私だったが、Xは私の年収の7倍はある、業界のチョーヤリ手。
まさかわざわざお越しいただく作家先生に恥をかかせることはないだろうとタカをくくっていた。
しかし当日、待ち合わせにやってきたXに、
「予習どうでした?」と聞くと彼はあっさり、
「面倒だから、ヤらなかった」
「こ、こ、これだけは読んでおいてってダイジェスト版まで渡しましたよね?」
「んー、ちょっと読んだけど内容忘れちゃった」
こ、こ、こ、このオヤジはー!
そのふてぶてしさに叫びたくなる気持ちをグっと押さえて、とにかくA氏が現れるまで、私は必死に彼の詳細について説明しまくるのであった。
こんなに私が熱くなるのには訳がある。
だって作家A氏はエッセイスト。
発表されているほとんどの作品は自分ネタ。
それで彼について知らなかったら、酷い失礼にあたる。
今夜の会食に持ち込むために褒めちぎった『あなたのハードコアなファン』という言葉が嘘になる。
しかしさすがはチョーヤリ手プロヂューサ、X。
作家A氏が登場すると、も〜わざとらしいほどの満面の笑みで、彼の背中を叩き、
「いや〜、先生。お会いできて光栄です!」
憧れの人を目の前にして、モジモジ赤面でどもる私とはえらい違い。
でも落ち着いて会食となると私も負けてはいられん。
この時のための質問事項や作品のエピソードを口にしようとした途端、隣のXが、
「やっぱりあの作品に出てくる○○は〜」
あっ、これさっき私が直前にXに吹き込んだネタじゃん。も〜調子いいなー。
「で、あの作品の登場人物のサセコは…」
あっ、これも私が教えたネタだ、まったくー。
しかもその人物の名前間違ってるよ、サセコじゃなくて、サエコだってば!
A氏は絶対気がついてるって、作家って内面はナイーブに違いないんだから。
でも突っ込んだらA氏の恥になる。
ここは大人の対応、聞き流しだ。
ところが私も会話に入ろうとした時、私はちょっとした間違いをした。
ほんのちょっとの言い間違い。
しかし聞き逃さなかったのはX、
「おいおい、君は先生の作品、どんだけ読んでいるんだねー?
予習ぐらいしてこないと先生に失礼だろうが」
「ちょ、ちょっと待てー!」
そう叫びたかった私を、Xは眼鏡の奥の目で、こうねじ伏せた。

その笑っていない目…、こ、怖い…。
ヒー。エックスゥ〜、さすが業界の強者。
ヒトから盗めるものはなんでも取り上げ、しかもヒトの失敗はすかさず好チャンスに持ち込む…。
結局会食の間中、Xはご機嫌で私から仕入れたネタを話し続けた。
ず、ずるい大人…プロヂューサX…。
しかしこの2年後、彼は私の某仕事のプロヂュースを手掛け見事成功させるのであった。
その発表まであと、10日。






ふ、伏字とはいえ、こんなのブログで流しちゃっていいんですか~??汗)[E:happy01]
憧れの人との会食も、ビジネス入ると大変なんですね~。
がんばれ、わ・か・き 天才ライターNAOMIE。
オイラ、オタク化は無理かもしれないですが、
NAOMIEさんを会社内で流行らせようとたくらんでますZO。[E:catface]
サセコ・・・、ハメオ・・・って・・・。
師匠の「はうっ」に様々な想像を掻き立てられます。
10日後楽しみですね。[E:wink]
みなさん、コメントありがとうございます!
>おさむさん
ど、どうやって、社内で…!?