敗戦投手.2

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東関東大震災の被害は、元々グラついていた自分の仕事の基盤まで、揺るがしはじめた。

それは去年の12月のこと。

追い込まれたのは、まさに崖っぷち。あと一歩でクリエータ業は廃業といった状態。
その臨場感たるや、かかとに当たる小石の感覚さえ感じられるほどだった。当然数秒後に、小石は乾いた音をたてて、すぐそこの崖下まで真っ逆さまだ。

その時点でまず私は所属していたランニングクラブを辞めた。
チームで走ること、レース中に励ましあうことは、近年覚えた新しい喜びだったけれど、もう私の余裕はゼロ。

愛着あふれる私が作ったチームロゴ。そのウエアをこんなに早く自分から脱ぐことになるとは。それでもどうしようもなかった。

当時は仕事仲間ともよく言い争いになった。
「ジャーナリズムにあぐらをかくことに慣れ切って、新規開拓のために頭を下げることも、営業にも出ないなんて」
「新しい仕事を見つけられないのは、変わることを拒否している証拠だ」

広告も出版もダメ。かといって新しいことは見つからない。焦っているのはみんな一緒だった。

しかし自分にクリエータとしての才能がなかったとしても、1つだけ特殊な才能を私は持っていた。

それは、なんといったらいいか、勘のようなもの。いや、ある種の嗅覚と言ったほうが正しいか。

とにかく自分の人生の必要な時に必要な人を探しあてられる。このことには昔から妙な自信があった。そして確実に今まで、世界を変えてくれる人に出会えてきた。

12月のある日、私はMacの向こうの1つの言葉に出会う。

『自分のために文章を書くのはアマチュア。プロはみんなが知りたいことを書く』

たまたま行き着いた知らない人のブログ。しかしナニかが私の中で引っかかった。iPadを手にして体を横たえる。その夜のうちに、私はそのブログの膨大な記事を全て読んだ。

読めば読むほど夢中に、そしてひどく興奮していった。

自分の鼻はいつも正しい男を嗅ぎつける。
自分に対して誇らしく感じること、それは随分久しぶりのことだった。
(つづく)

「敗戦投手.2」への2件のフィードバック

    1. 凪’Sさん、嬉しいコメント、ありがとうございます。

      やっぱり野球好きだ〜(違)

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