自分が経営者サイドに立って初めて感じたことだが、売上という名のお金は、理想を手にするためのカードでしかない。
以前、フリーのイラストレーターだった時の売上は、もっとギラギラしたものだった。
例えば、この絵を描いたギャラで、アレを買おうとかアレを食べようとか。
なんというか個人の欲望そのままだったのだ。
ところが今、会社という組織の一員となると、集めたお金は投資に回したり、従業員に払ったりとぐるぐると動くものになったのだ。
お金の姿はもう遠に変わり、今はまさしくカード、ほとんどが賭けのための手札に見える。
とは言っても、いつも手元に大勝負できるほどのカードが揃っている訳ではない。
去年の暮れには、8号のエンジンを乗せ換えたし、ご存知のとおり2月は季節風が吹きまわって(しかも週末狙いだ)、ろくに出船できていない。
厳しい真冬の状況に、頼るところはただ1つ。
話を聞いてくれそうな銀行に片っ端から連絡をとる。
「融資のご相談に参りました」
なんとか1つの銀行の応接間に通された時の私は、非常に緊張していた。
大体普段は、ビシっとスーツを着ている殿方と接する機会すらないのだ。
異常に大きい机は書類の受け渡しに、身を乗り出すようだし、バカに見られたら不利かな、と言葉使いにも気を使う。
まるでここを落ちたら次がない、というほど追い込まれた新卒の就職面接のような気分だった。
ところが……、
先方の1人、支店長がなにやら、初対面であるにかかわらず、やけに好意的な目で私を見ている。
担当の人が席を立った時、支店長は笑顔で私に話かけてきた。
「実は部署に、大変な釣り好きがおりまして……」
たちまちイヤな予感が湧き上がってくる。
「ナオミさんのことも存じておりました」
「なんでも以前は本も出されたとか?」
融資にこぎつけるまで、必死に作っていた営業スマイルがたちまち凍りつく……。
ここで、出すか、16年も前の話?
ここで、出るか、私の著書と言う名の黒歴史……!
[amazonjs asin=”4886414494″ locale=”JP” title=”ツリまくりのイキまくり―C.S.C.Naomieのnothing but (タツミムック)”]
▲Amazonの中古で6点も出ていた……がくっ。
融資の話が決まらなかったら、絶対この本のせいに違いない。
くーー。
せ、せめてタイトルを『女釣り師が行く』とか、『美女は3度釣る』とか、まともなものにしておけば、よかった。









