☆『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに1999年に単行本になったものから抜粋、大幅改訂し
たものです ☆
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イサキの釣り方はこちら
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21. 解かれた破門
先日、千葉在住の某ヒラメオヤジに聞いたお話。
外房のとあるヒラメ乗合で早くからトモを取ったのは、75歳くらいの見慣れないおじいちゃん。
しかし用意してきたクーラーは5リットルの超小型。
そればかりか仕掛けの親バリと孫バリに、イワシを1匹ずつ付けて投入。
実はその日が思いつきの初釣行だったらしい。
しかし周りの心配を他所に、竿頭はこのおじいちゃんだったとか…。
で、さらに驚いたことに、梅ちゃんは同じ話を遠く南伊豆のヒラメ船で聞いたんだって。
世の中って、狭〜いっ!
さて、前回のアオリ制覇に気を良くして、私は今回もイカ狙い。
布良でのヤリイカ釣行を予約。
ところが前日、船宿から電話で、
「明日は風が強くてヤリイカは無理。
イサキが釣れているからイサキで出ます。
ヒラメも釣れそうだから、狙う人は竿を2本持ってきて」
え〜っ、釣りもの変更〜?
でもまぁ、イサキならいいか。
ギリギリにキャンセルするのも、悪いし。
満船の中の2本竿は気を使うから、私はイサキ1本狙いに決めた。
ところが当日、船長の予測は当たらず、海はベタなぎ。
風はちっても吹いていない。
あれ?
船の中に見覚えがある顔が…。
あ〜っ!
オールシーズンいつでも真っ黒。
空前絶後のスーパースパルタ頑固オヤジ、元師匠!
横には元兄弟子、岩ボーの姿も!
半年前に破門になってから初めての再会。
千葉の隅っこで会うなんて、やっぱ釣り業界って狭い〜。
「久しぶりです…」と挨拶しながらも、私の体は後ずさり。
相変わらず師匠はムッツリ、岩ボーはニヤニヤとイジ悪そうな顔。
成り行き上、隣で竿を出すものの私は緊張でガチガチ。
シロートには手を出さない師匠だが、元弟子の私はいうなれば半クロート。
いつまた拳固が飛んできてもおかしくない状態だもの。
支給されたオキアミを付けて投入すると、アタリがあったのは30分後。
上げてみるとアジの一荷。
その語もずーーーっと、アジのオンパレード。
サバ避けながらのアジ釣りなら耳にしたことがあるけど、これってアジを避けながらイサキを釣れってこと?
1時間後、やっと鋭いアタリがきた。
それはイサキの一荷だったが、型は小さく15センチ。
しかもこれ、一回っきり。
こっから先はまたアジしか食わない。
こんな情けない状態なのに、船長だけは気にもとめない。
「ここはヒラメやシマアジがいるよ」
そんなこと言われたって、ヒラメ道具は一切持ってきてない。
試しにイサキ仕掛けにアジを付けて落とすと、たちまち隣の人とオマツリに。
周りにイサキ船は見えないし、一体船長なにがやりたいの?
バケツにはすでに30尾ものアジ。
どれもエサにするには大きくて、食べるには小さい、中途半端サイズ。
コレならアジ専門船に乗ったほうが全然イイ。
もう、うんざり〜、と思ったのは私だけではなく、とうとう船中ゴロリと横になるオヤジも姿も…。
ククッ。
そこにまたアジの魚信が。
仕掛けを上げるのも面倒で、追い食いさせるのに放っておくと…ククッ、ククッ…と揺れていた竿先が、突然グ〜ッ! と突き刺さった。
わっ、付いていたアジになにかが食らいついた!
慌てて竿を手にしても、魚はちっとも弱まらず、グイグイと乱暴に引く。
少し弱って、巻こうとするとグーーッとまた重くなる。
勘弁して〜。
掛かったのは1.5号の細いイサキ仕掛けなんだよー。
もう私の脚はガクガク、心臓バクバク…。
この引きは…タイ?
違う、あんなに優雅じゃない。
青物?
いや、そこまで強引でもない。
なに、なに、一体なにものなのーーー!?
と、岩ボーがタモを持って横に立つ。
「元妹弟子の魚は、俺が確かに…」
辛い修行をともにした兄弟子、ジ〜ン、本当は優しい奴だったんだね。
ン?
タモの持ち方が逆。
海面を向いているのは、棒のほうだ!
「…確かに海に突き落としてやる!」
ゲゲ!
「やめて〜!」
私の絶叫が響く中、どうにか上がってきた仕掛けをたぐると、海中に魚の姿がゆら〜り。
褐色の平たい魚体が反転する。
「ヒ、ヒラメだ〜っ!」
初のヒラメは1.2キロ。
3本ハリの一番下、かろうじてハリに掛かっていた。
弟子2人が船中4枚のヒラメのうちの2枚を手にする中、師匠は釣っても釣っても、またマトウ。
マトウばかりを釣りながら、さらに無口になっていき、ただただ口を閉ざしプルプル肩を震わせている。
結局メインのイサキの釣果は、0〜2尾。
イサキが釣れてると聞いてきたのに、アジしか釣れないオヤジばかりで、船中無言のブーイング。
私はヒラメが釣れたものの、半分はなにやっているのかよく分からない状態。
完全なる不完全燃焼…。
それでも船長、決めのセリフは、
「また来なさい」
ふ、ふ、ふ、ふざけるなーーーっ!
しかしよかったことも1つ。
細ハリスでヒラメを取った技術が認められ、師匠が破門を解いてくれることに。
「ただし!」
ま、まさか…?
「…手巻きでアコウを釣ってこい」
やっぱり!
「は、破門のままで、結構です…」






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