ナオ太郎の習い事〜スイミング

Facebooktwittergoogle_plus

息継ぎなしで10メートルのクロールテストは、安心して見ていられたけれど、同じ10メートルでも背泳ぎとなると勝手が違う。

スタート直後に腹を膨らませるように体をそらし、アゴを上げて視線は天井へ…

「背泳ぎはいろいろ忙しいんだよ…」

テスト前日、ぼやいていたように、テスト直前の練習でもナオ太郎(仮名)は成功できなかった。

壁を蹴った体を伸ばすどころか、くの字に曲げ、5秒もしないうちに沈没するナオ太郎に、観覧席の私は早くも帰宅時のなぐさめの言葉を考えだした。

ジュニアオリンピックの水泳選手を毎年輩出する、このスイミングスクール。

泳力によってクラスが10近くにも別れていて、なかなか厳しい。

『できなくて』叩かれることはないが、規律を乱したり、安全面をほんの少しでも脅かすと、お尻にコーチの平手が飛んでくる。

今日のように3カ月に1度の進級テストは細かく評価され、そのうちの1つでもクリアできなければ、不合格。

合格者は帰りにジュースをもらえるが、不合格者に渡されるのはアメ玉一個だけ、と実力主義は徹底されている。

とうとう背泳ぎのテストが始まると、男性コーチが手短に、
「天井を見るんだよ」とナオ太郎にアドバイスを与える。

コーチの合図で、ナオ太郎は壁をキックしスタート。

するとそのまま、縮ませた体をすっと伸ばした。

びっくりするほど、ほんの少しの不安定さを感じさせまま、体は水面を滑り出す。

わずか3メートル進んだところで、私はいける、と確信した。

ゴール直後に私を見上げるナオ太郎に、両腕で大きな丸を作ってやると、緊張した顔にわっと笑顔が戻った。

だけどテストからずっと私の胸を衝いていたのは、ナオ太郎が火事場のバカ力的に合格をもぎ取ったことではなく、それを見守っていたコーチたちの姿勢だった。

男性コーチはいつもの何倍もの大声で、
「1、2、1、2…」と水かきのリズムを取っていた。

プールの中で、全ての受験者のスタートからゴールまで寄り添っていた女性コーチの右手は、ずっと揺れていた。

時には子供たちを叩かなくていけないその手の平で、泳ぐ子供たちを合格というゴール地点まで後押しするかのように、後ろから前へと水をゆらゆらと押し続けていたのだった。

Img002

「ナオ太郎の習い事〜スイミング」への4件のフィードバック

  1. 泳ぎは海で覚えるのが一番ですよ~。
    浮力もあるし。
    台風の影響で4連休であります。[E:weep]

  2. >nobuさん
    もちろん、リカちゃんです!
    >ポエマーさん
    3歳の時に中耳炎で一回やめて、再開してまだ半年なんだけど、進歩したよー。
    >はるっちさん
    台風、そっちは被害大だったのね…。
    こっちは一日も休みなしでしたよw

ポエマー へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です