『ツリまくりのイキまくり』26

Facebooktwittergoogle_plus

★ 『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに単行本になったものから抜粋、大幅改訂したものです

       ………………………………………

『庶民の釣り師』〜大原港、敷島丸

聞こえてくるのは、ため息とやけっぱちの捨て台詞ばかり…。
そんなひどい食い渋り中でも、淡々とした顔で黙々と釣りまくるオヤジ、つまり名人。

そんな名人は釣り人口のほんの0.1%にも満たない。
大多数の庶民の釣り師の釣果は、魚の食いのよし悪しに左右されているはず。

6

私ももちろん、そのうちの1人。
とくに最近、魚の機嫌とともに、貧果のワースト記録を堂々塗り替えている。
情けないほど、立派な小市民だ。

今回は大原港、敷島丸でのアカイカ釣り。
しかしこれ以上の記録更新は、辛すぎる。
不安の多い初のアカイカ釣りは午後船に回して、お土産確保のために午前船でイサキ釣りもやることに。

しかし手堅いはずのイサキがまさかの食い渋り。
たった3尾の釣果に、爆発寸前。
暴れたいのを必死に押さえる…。

5

なんとか岩ボーに体を押さえられて、30分後に午後船へ。
ところが、
「でぇ〜い!
もうどうにでも、なれ!」との捨て鉢の気持ちがよかったのか?

1投目からあっちもこっちも竿がギューンと唸る。
上がってきたイカがプシューッと水を吹く。
アカイカ、アカイカ、それも50センチ級まじりのアカイカ大パーティに突入〜!

「うわぁ〜!でか〜い!」と歓声が上がる中、師匠はすぐにツ抜け。
あの岩ボーですら、5杯をゲット。

そんな興奮のるつぼの中、硬く沈黙している女が…1人…。
日に焼けた顔は血の気が引き、不気味に青黒くなった…私…。

私はまだ久しぶりの釣りものの洗礼の真っ最中。
投入ごとに、
「なんでここまで…」と思うほど、仕掛けはめちゃくちゃ、ツノに刺さるのは私の指ばかり…。

船中、見事な孤独。
完璧に取り残されている。

8

2時間たってやっとまともに仕掛けを投入。
途端にギュウ、ギュウと竿を押さえつけられ、直後、ギュイ〜ン! イカとは思えない引きの手応え!

しかしその流し、船中で一番、投入が遅かった私。
イカが乗った途端船長が、
「はい、上げて下さい!」

イカ釣りにはお決まりのハイペース。
焦って巻くと、フ〜ッといきなり軽くなってしまった…バレた…。

次のポイントでは、心してすぐ投入。
今度もいきなりのギュウ、ギュウ、ギュ〜ン!

慎重に巻いてきたつもりなのに、また途中で…ふっ…と抵抗がなくなった…。
またバレた…。

悪夢はまだまだ終わらない。
次も次もそのまた次も、バレ、バレ、バレの連続。

ツノに残っているのは、墨、足のみ…。
私の青黒かった顔は、今では蒼白。

「一体、なぜ!?」

1

周囲のオヤジのうれし〜悲鳴が、胸にこたえる、神経に触って、イライライライラ…。
おまけにイカを取り込む時の墨があっちこちから飛んでくる。
大事にしていたセーターはたちまち黒い墨だらけ。
腕も顔も全身墨だらけ。

白いモノを浴びての放心なら慣れているけれど、黒いモノを浴びての呆然は初体験。
気分も真っ黒、漆黒の闇。

Img416

「ね〜ちゃん、竿が硬過ぎるんだよ」
見かねた隣のオヤジからアドバイス。

私の竿は240の短竿だが、確かに周りのオヤジの竿は3メートルを超すムーチングロッドばかり。
短竿派の師匠ですら、珍しく270を使っている。

「イ〜ッ!?」
バレの原因は分かったが、替えの竿はないし、どうしよう!

その時まで釣れない私を見もしなかった師匠が、
「コレ、使え」
手には1.5ミリのクッションゴム。

ジ〜ン…。
愛に感謝!
ゴムを付けてもう一回、竿を握る(あくまでマジな釣りの話)。

すると、ギュ〜ン! 早速イカが乗った!
しかし問題はこれから。

竿をしっかり抱え込み、ゆっくり、ゆっくり巻き上げる。
焦る気持ちを必死に押さえて、ソフトに、ソフトに。
イカが走ってもバレない程度、道糸が出過ぎない程度に微妙なドラグ調整。

Img418

こ、今度こそ、これで決めたい!
あと8メートル…5メートル…。
とうとう道糸の全てを巻き取っても、イカの重みが感じられる。

ドキドキしながら仕掛けを取り込む。
1番上のツノには、イカは付いていない…。
2番目のツノ…、これにもいない…。

3番目…、
「やった〜っ! 乗ってる!」

しかしツノが刺さっているのは辛うじて、触手1本。
しかもその触手、今にも切れそうに、細〜く、長〜く、伸び切っている。
し、心臓が痛い…。

慌てて叫ぶのは、
「ギャフ、ギャフ取って〜!」

その時、イカがムッと全身を縮めて、力の限り伸ばした。
シュッパ〜!
窮地のアカイカ、最後の一撃。

水面を蹴ってツノから離れた…。
とっさに手にしたギャフで引っかけようとしても…
ハリ先は水面を空虚にただようだけ…
…ガクッ…。

7

沖揚がり師匠のイカは20杯をこし、岩ボーでさえ15杯。
私は…5杯しか取れず…スソ。

食いのいい日でさえ釣れないなんて、これじゃあ、庶民の釣り師以下…。
口を曲げて涙を堪える。

「さ、竿だ。
竿が悪かったんだ。
私はヘタじゃない〜っ!」

貧果の訳を腕とは認めず、道具のせいにする。
ますます正調ツリオヤジ化が進む私であった。

Img419

「『ツリまくりのイキまくり』26」への3件のフィードバック

  1. 5杯ならいいですよ(笑)
    私の初イカは正月の長井から出船でした。
    結果は1杯!
    威勢良く120号のオモリを投げたら、最後のツノが人差し指にグッサリ…
    腕ごと持ってかれると思いましたよ。

  2. >加藤だいさん
    コメントありがとうございます!
    腕が持っていかれるような経験、すごいですねー。でもちょっと笑っちゃいましたw

つばさ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です