『ツリまくりのイキまくり』6

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★ 『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに単行本になったものから抜粋、大幅改訂したものです ★
アコウダイの釣り方はこちら
        ………………………………………
5. 師匠の激怒〜太海港 幸昌丸
 前回、富三丸で深場釣りを経験して以来、私の気持ちは晴れない。
仕事をしていてもデートをしていても、出るのはため息ばかり…。
「What’s wrong ?」
 見かねた男が心配そうに私の顔を覗き込む。
ダークスキンにブラウンアイズ…。
ああ、そうそう釣りを始める前はこういう男がタイプだったんだよねぇ。
 ごめんね、ベイヴ。
今私が夢中なのは真っ赤かの体で目なんか飛び出しちゃっている奴…。
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 イキたい、イキたい、腰が砕けるほど…じゃなくて…もう1回深場釣りにイキたいんだよ〜!
(深いトコに興奮を覚えるのは前から変わっていない)。
  
 でも燃え上がる気持ちには付きもんの邪魔者…師匠。
「今度電ドーリール使ったら破門」
ううっ。
「しかし私などか細い女なんですし、深海500メートルで350号オモリを手巻きなんてちょっと辛過ぎると思うのですが…」と、おそろおそる私。
「ソレなら深場釣りは諦めろ」
ううっ。
 そして師匠はおもむろに1枚の写真を取り出す。
どーーん!
そこには軽く4キロを超す特大アコウを抱えてホホエム師匠が…。
 私だって釣り師の端くれっ。
こんなもの見せられて黙っていられない。
イッてやる! ヤッてやる!
もう1回手巻きでアコウ、こんな気持ちでシーズンを終わらせられるか〜!
 大丈夫、前回みたいに優しい船長がきっと助けてくれる。
こっそりまた電ドー貸してくれるはず。
 師匠だって1回トライしたとこさえ見せれば電ドー許可してくれるかも?
いざとなれば隣のオヤジにおっぱいの1つも触らせて手伝ってもらおう。
 とにかくヤッてやる〜!
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 今回は深場釣りの本場、太海の幸昌丸からの出船。
1時間以上もかけてやっとポイントに到着すると常連氏がポツリと、
「今日はナギだな」
 Excuse me~?
船が倒れんばかりに揺れているというのに、ナ、ナギ?
私は立ってもいられないのに…恐るべき外海。
私は船ベリを握りしめて硬直状態。
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 船長がポイントを定めるのに船をゆっくりまわしてから、いよいよ投入の合図、1投目。
しかし結果は竿先が沈黙したままで巻き上げ。
コリコリ…一言、重い。
300メートルくらいでゼイゼイ。
 見かねた上乗りさんが飛んで来る。
「おめえ、やっぱ無理だよぉ。電動貸してやっからさ〜」と船長。
 う〜ん、やっぱりの展開に私は秘かにガッツポーズ。
「師匠、あの…無理っぽい様子みたいなので…あの…その…電ドー…」
「破門だな」
 ガィ〜ン!
期待の美味しい展開はいきなり終わり。
し、師匠それはないよ〜!
 泣きじゃくる私に船長が、
「しょうがねぇなぁ。俺と100メートルずつ交代で巻こう。
…ところでお前ら、戸塚ヨットスクールじゃないよな?」
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 そして2、3投目もなんの魚も掛からない。
私はもう自暴自棄。
帰りた〜い…。
アコウなんてどうでもいい。
とっとと帰りたい。
船ベリに並べた紅染めイカが涙で滲む…。
 しかしその日は3つのことに救われた。
1つは天気。
9時になる頃には朝の高波もおさまり、ベタナギ快晴。
 もう1つはその日私が座ったトモ席が有利だったこと。
いくら投入しても成果の上がらないミヨシが段々暗くなってイクのに反比例して、トモのほうは着々と釣果を上げすっかりパーティ、パーティ。
釣れない私も落ち込んでばっかりいられない雰囲気に。
 そしてもう1つ最高にラッキーだったのは船長がすっごいいい人で呆れずに私の面倒を見てくれたこと。
 5投目でとうとう待望の顔を見た! 
それは1.8キロのアコウダイ。
「Hell Yeah〜!」
やったぞ〜っ! とうとう釣った!
「師匠っ、見て下さい。
ついに手巻きでアコウ、ヤリましたーーーっ!」
 しかし師匠は冷たい声で、
「それ船長が半分手伝ったから0.5尾だな」
 な、な、な、なにーーーーー!?
こ、こ、こ、このクソオヤジーーーーッ!
ちっくしょう!
次の流しは絶対1人でとってやる〜。
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 奥歯を噛み締めての次の流し。
目も覚めるような、竿先のピクピク。
「アタリがきた!」
 船長が道糸を伸ばせと教えてくれる。
するともう1回、竿先に反応が。
次に船長は、道糸を直接手に取り魚が付いているかいないか感触を確かめろと指示。
う〜ん。
いるようないないような…?
 巻き上げ始めると、お、重い。
1.8キロを釣った時と比べ物にならない。
とにかく重い。
私があくせくしている姿を見て、船長が、
「代わろうか?」
「最後は1人で巻き切る」
「それじゃあ、せめてリール押えててやるよぉ」
 400メートル、300メートル…とうとう重くてハンドルが動かなくなる。
ふ、不安がよぎる…。
コレってもしかして、オマツリ?
「がんばれよ。
100メートルも過ぎれば、だんだん魚が浮いて軽くなってくるから」と、船長。
 ゴリゴリ…はぁはぁ…200メートル…100メートル…。
全然軽くならない。
 サメが付いてきたらどうしよう?
シマガツオでもやっぱり泣くぞ。
「突然軽くなったり、重くなったりしねぇか? 代わろうか?」
船長が心配している声が時間ごとに多くなってくる。
「だ、大丈夫」
私の返事は時間ごとに小声になってくる。
 とうとう50メートル、30メートル。
「おいっ、あそこ、あそこ!」
 船長が指した指先の向こう、波間に漂うアコウ2尾。
「あ…あ? ああぁぁぁぁぁぁぁ〜っっ!」
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 1尾は堂々3キロオーバー。
なんとその日一番の大型!
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 本当にこんなに私を泣かせて、そして私を喜ばせたvery special な釣りはない。
船長、ありがとう。
すべてあなたのお陰です。
…ううっ。
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この釣りが教えてくれたこと、たくさんあるんだけど、一番はやっぱり最後まで諦めないってことかな?
力が強い奴、頭がいい奴、いろいろ能力には差があるけど、どんな状況でもとにかくトライ。
しかし船長、のちに私が送った色紙に、
「マンガ家のナオミさんの色紙』って注釈つけたのは、涙ものだ〜!

「『ツリまくりのイキまくり』6」への12件のフィードバック

  1. 深場釣り・・・・・・・・・手巻きって[E:bicycle]
    そんなNAOMIEさんを逞しい女性だなって日々想像中デス♪

  2. ここ2回程
    通った船宿なので凄く雰囲気がわかりました。
    良い漫画書きますねぇ~
    この頃Mだったナオミさん
    今では立派なSに
    いや
    女王様に・・・性長しました。

  3. これ最初に釣り情報で読んだ時、「どんな女の人なんだろう?」と本気で思いました。

  4. 自暴自棄になる気持ちわかります…
    手巻きでアコウみんなでやれば怖くない。

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