『ツリまくりのイキまくり』30

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★ 『ツリまくりのイキまくり』は隔週間つり情報に連載、のちに単行本になったものから抜粋、大幅改訂したものです

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『修行の道.2』〜江見港 新栄丸

ツリで家庭を失った梅ちゃんをはじめ、人生を捨てて竿を降るスーパーツリオヤジには何人も遭遇している。
中には仕事や女をフイにしただけでなく、なんと小指を失ったオヤジも!

その日の某氏、仲間数人と泊まりがかりで、遠征釣りに出掛けていた。
初日の釣りを終え、港に上がろうとしていた時のこと。

隣を走っていったダンバー用の船、その金属の付属品に左手が接触!
小指を……すっぱり……。

手をグルグル巻きにしたタオルは、たちまち真っ赤に血で染まっていく。
手の平はジンジン痛み、ドンドン膨れ上がっていく。

それでも病院に行かないどころか、仲間にも冷や汗を垂らしながら、
「なんでもない」と押し通したとか。

しかも仲間に心配をかけないために、その夜の宴会にまで参加。
とうとう「痛い」と一言も言わなかったらしい……。

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女1人で船に乗ると、
「船頭になって十年たつけど、こんな変な客初めて見る…」と、私も変人扱いされることも。

特に今回のように、宿をとって釣りをする時はなおさら。

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しかし小指をなくしても、釣りを続けるようなメガ級クレージーなツリオヤジがゴロゴロいる沖釣り界。
私なんて、まだまだ甘い、甘い。

さて、師匠からの指令、ウイリーのコマセシャクリ修行2日目は江見の新栄丸にて。

やっぱり船長は呆れた様子で、
「なにが哀しくて、女1人で釣りをするの?」と、すっかり不思議がられる。

でも私の気合はムンムン。
今日こそなんとか上達してやるっ!

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まずはハナダイのポイントへ。
しかしこの日はまだまだ水温が高く、ハナダイの食いはイマイチ。

しばらくして「連日、食いまくっている」というイサキのポイントへ移動。

間もなくすると周りでポツポツ食いだした。
船長の推奨はハリにマンボーの皮を付けること。

師匠の指令はウイリーバリでの釣りだったけれど、ここは仕方ない。
私もマンボーを付けて竿を振る。

しかしイサキ釣りっていまいち、どうやっていいのか分からない。
場所、場所で仕掛けも違えば、釣り方も違う。

南伊豆ではコマセをワ〜ッとまいてから、置竿で待て、と教わった。
ダイヤモンドやメルセデスをポンとプレゼントして、後は相手が自らパンツを下ろすのを待つ、高級クラブホステス落とし方。

相模湾ではちょっとずつコマセをまく、ウイリーのシャクリ釣り。
これは絶えずコールやメールをしてアピールする一般庶民マメマメ作戦か。

片貝ではイカタンをフ〜ワリと漂わせた。
大原では空バリでひたすら誘った。

港ごとに全部釣り方が違う。
しかもここ江見の同じ船上でも、全員違うスタイルで竿を振っている。

そのアクションはひど〜く微妙。
私の目にではその違いや特徴を盗めない。
いつものようにツリオヤジを真似ようにも、真似られない。

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周りは慣れた様子で5尾、6尾……。
私は食わせた、という実感がない、ラッキーパンチで1尾、2尾……。

な、なんとかしなくちゃ!

今までは……、そうだ! 

仕掛けを落とし込んだ時にアタったぞ。
そこで、同じ状況を作ってみる。

えい!と上を向けた竿を下に。
シ〜ン…。

とってもわざとらしいのか、見向きもされない。
もう竿をウロウロ振るだけで、大パニック!

当初の気合はカラカラ空回り。
私以外は入れ掛かりの大爆釣。
私1人を取り残し、みんなズンズンスピードアップ!

私にはとうとう1尾も掛からなくなった……。

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そこに船長が、
「底から少し上げて、リール一巻き分ずつ、しっかりシャクリなよ」

船長のお手本とおりにやってみると、ククッ。
食った!

いきなり一荷で食ってきた。
途端にまさかの入れ食い状態!

次々くる、ククッの刺激。
水面に姿を現した魚体を見た興奮。
ビチビチ跳ねるイサキをグッと掴んで、バケツの中へ。
バシャ〜ン!

あとはもう夢中で再投入を繰り返す。
き、気持ちいい〜っ!

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まるで処女喪失したばかり、今まで痛いだけだった女のコが、初めてヨロコビに目覚めたよう。
ああっ、快感!

そのまま沖揚がりまで食いは止まらなかった。
スソ脱出はかなわなくても、竿頭の半分もいかなくても、ジ〜ン。
私の得た快楽は大きくて、幸せ〜!

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帰宅すると、クーラーの上に婚姻届けを置いて、今度こそとダンナに差し出す。
しかし瞳に期待一杯の星を飛ばしている私とは逆に、ダンナは不機嫌。

「2日も黙って釣りに行きやがって。
このウスバカッ!」

いつまでたっても、家庭内では幸せを掴めそうもない…。

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