キハダのシーズンはまるで夏祭りだ。
普段は疎遠にしている親戚が一同に集まって、神輿を持ち上げる。
特にコマセ釣りは、お客さんも、釣れてる人のサポートにまわることが多いので、独特の連帯感がある。
店を開ければ、「今年もよろしく」の挨拶が飛び交うのだ。
しかし、去年、連日のようにコマセキハダ釣りにチャレンジしていた『N岡さん』の姿がまだ見えない……。
N岡さんは、白いワイシャツに、黒のスラックス。
そして足元も黒の革靴で、早朝店に並ぶので、非常によく目立つ。
スーツ姿でも、長髪の姿は、とてもサラリーマンには見えないしで、しばらく謎の男とされていた。
夜勤の後、寝ないで釣船に乗り、沖あがりにはまた勤務先に直行、というサイクルをくりかえしていることが分かったのは、しばらくしてスタッフと打ち解けてきた後だった。
しかし……
この過酷な日常を20回以上続けても、釣りの神様は、無慈悲なもので、一向にN岡さんにアタリを与えない。
日に日に顔色悪く、ボロボロになる姿に、スタッフから、
「明日はお休みください。
ブログで釣果を確かめて、状況がよくなったらまた来店されては?」と、提案しても、N岡さんは首を縦にはふらない。
「スマホも持っていないし、そういう情報収集は苦手。
こうなれば釣れるまで、通います」
そしてとうとうどちらにも答えが出ないまま、シーズン終了となってしまった。
きっと今年もN岡さんは不屈の体力で、解禁直後から来店されるだろうと、思っていたが、一向に音沙汰なし……。
1年たって冷静になったのかな?
釣れる時期を読んでいるのか?
まさか病気になったりしていないよね?
あまりの沈黙に、心配しはじめていたら、やっと先日連絡がついた。
どうやら8月は仕事の都合がつかず、参戦は9月になってからと決めているとか。
N岡さん、まずは元気でなによりでした。
今年こそ、夢の大物ゲットといきましょう!









